温泉は体を浸けてリラックスするだけでなく、飲むこともできます。この記事では、温泉の定義や飲む温泉水の概要などについて解説します。
温泉水を飲む行為は飲泉と呼ばれは、ヨーロッパでは健康を目的として古くから行われてきた方法です。日本の温泉でも温泉水を飲めるため、温泉好きな人、温泉水を飲むことに興味のある人はぜひ参考にしてください。
温泉とは?
温泉は、温泉法と呼ばれる法律により明確な定義が存在します。具体的には、地中から湧出している温水、鉱水、水蒸気およびその他のガスであり、なおかつ以下の温度・物質の条件を満たしている必要があります。
- 温度:温泉源から採取される際の温度が摂氏25度以上である
- 物質:溶存物質や遊離炭酸(CO2)、リチウムイオン(Li+)など19の物資のうち1つを含んでいる
物質名 | 含有量(1kg中) |
---|---|
溶存物質(ガス性のものを除く。) | 総量1,000mg以上 |
遊離炭酸(CO2)(遊離二酸化炭素) | 250mg以上 |
リチウムイオン(Li+) | 1mg以上 |
ストロンチウムイオン(Sr2+) | 10mg以上 |
バリウムイオン(Ba2+) | 5mg以上 |
フェロ又はフェリイオン(Fe2+,Fe3+)(総鉄イオン) | 10mg以上 |
第一マンガンイオン(Mn2+)(マンガン(Ⅱ)イオン) | 10mg以上 |
水素イオン(H+) | 1mg以上 |
臭素イオン(Br–)(臭化物イオン) | 5mg以上 |
沃素イオン(I–)(ヨウ化物イオン) | 1mg以上 |
ふっ素イオン(F–)(フッ化物イオン) | 2mg以上 |
ヒドロひ酸イオン(HASO42-)(ヒ酸水素イオン) | 1.3mg以上 |
メタ亜ひ酸(HASO2) | 1mg以上 |
総硫黄(S) [HS–+S2O32-+H2Sに対応するもの] | 1mg以上 |
メタほう酸(HBO2) | 5mg以上 |
メタけい酸(H2SiO3) | 50mg以上 |
重炭酸そうだ(NaHCO3)(炭酸水素ナトリウム) | 340mg以上 |
ラドン(Rn) | 20(百億分の1キュリー単位)以上 |
ラジウム塩(Raとして) | 1億分の1mg以上 |
なお、その他のガスとありますが、炭化水素を主成分としている天然ガスは温泉には該当しません。
また温泉の中でも療養泉と呼ばれるものがありますが、こちらは治療を目的としたものであり、温度が摂氏25度以上でなおかつ、以下の物質を含んでいる必要があります。
物質名 | 含有量(1kg中) |
---|---|
溶存物質(ガス性のものを除く。) | 総量1 000mg以上 |
遊離二酸化炭素(CO2) | 1 000mg以上 |
総鉄イオン(Fe2++Fe3+) | 20mg以上 |
水素イオン(H+) | 1mg以上 |
よう化物イオン(I–) | 10mg以上 |
総硫黄(S)〔HS–+S2O32-+H2Sに対応するもの〕 | 2mg以上 |
ラドン(Rn) | 30(百億分の1キュリー単位)= 111Bq以上(8.25マッヘ単位以上) |
屋外で湯船に浸かることを「温泉に入ること」と認識している人もいるかもしれませんが、厳密には上記の条件を満たしたものでなければ温泉とはなりません。
温泉水は飲める
温泉に浸かることで体が温まりリラックスできるほか、その成分によって体の機能向上なども期待できる温泉ですが、実は飲むこともできます。
「飲泉」と呼ばれる温泉を飲む利用方法は、ヨーロッパを中心に古くから行われてきたものです。
あまり馴染みがない人もいるかもしれませんが、日本でも温泉水を飲むことは行われており、温泉を体内に取り入れることで健康に役立てようとしています。
ペットボトル入りの温泉水もある
温泉を飲みたい場合、温泉地に直接行って飲むほか、ペットボトルに入った市販の温泉水を飲むこともできます。
スーパーやコンビニでは、さまざまなミネラルウォーターを購入できますが、温泉水もミネラルウォーターの1つです。
市販の温泉水には、原材料に温泉水と記載されているほか、商品名に「温泉水」という表現が使われているケースもあるためチェックしてみてください。
温泉水は硫黄の臭いがしたり、塩分が含まれていたりと飲みにくいものですが、ペットボトルの温泉水は、そういった飲みにくさにつながる成分を調整し飲みやすくしています。そのため、飲むだけでなく、料理などにも活用できます。
飲む温泉水の選び方
ここでは、飲む温泉水を選ぶ際のポイントを紹介します。温泉水であればなんでも飲めるというものではなく、成分や効能、硬度などをチェックし、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
飲泉に興味のある人はぜひ参考にしてください。
成分や効能を確認する
温泉水には、さまざまなミネラル成分が含まれており、それぞれ効果や効能が異なります。そのため、自分が必要としている効果・効能を含んだ温泉水を選ぶことが大切です。
- ナトリウム:体の水分量を調節
- カルシウム・マグネシウム:骨や歯を形成
- カリウム:血圧をコントロール
- リン:骨や歯の形成・エネルギーの生成
- シリカ:肌の潤いキープ
上記以外にも、温泉水にはさまざまな成分が含まれているため、各効果・効能をチェックしてみてください。詳しくは「温泉水の効果と効能を5つ紹介」を参考にしてください。
硬度を確認する
水には硬度と呼ばれる数値があります。硬度は簡単にいうと、水の中にどのくらいカルシウムとマグネシウムが含まれているかを示すものです。硬度によって水の味が異なるため、温泉水を飲む前に硬度をチェックしておきましょう。
日本の場合、硬度が100以上になると硬水となります。硬水はカルシウムやマグネシウムが豊富に含まれており、若干苦味を感じることがあります。
一方で、硬度が100以下になると軟水となります。こちらは、カルシウム・マグネシウムの量は少なくなりますが、味にクセがないため飲みやすくなっています。
硬水が苦手な人、胃腸への負担を軽減したい人は軟水がおすすめです。
温泉水を飲む際の注意点
温泉水は飲むことができますが、どのような温泉水でも飲めるわけではありません。飲むことができる温泉水は、各都道府県から飲用の許可を得ているもののみです。
また人が入浴する温泉は飲まずに、飲泉所など別途用意されている場所で飲むようにしてください。飲む際には、清潔なコップを使用し、飲みすぎないようにしましょう。
さらに、子どもには温泉水を飲ませないようにしてください。水筒などに保管して持ち帰るのではなく、汲みたてをその場で飲むのが原則です。
持病がある人や薬を服用している人の場合、飲泉の前に主治医に飲泉が可能かどうか確認しておきましょう。
まとめ
今回は、温泉水の概要や飲める温泉水について解説しました。温泉水は法律によって定義されており、一定の条件を満たしたものでなければ温泉水とは認められません。
また温泉水は飲むこともできます。全ての温泉水が飲めるわけではないため、飲泉に興味のある人は、温泉施設で飲用可能かどうか確認することをおすすめします。
参考文献
日本温泉協会:飲泉について
環境省:温泉の定義 [温泉の保護と利用